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良夫が「何でも屋」の仕事をしているのは、姉に頼まれたからである。
数年前まで良夫は、小さな劇団に所属していた役者だった。
役者を目指した理由はよくある話で、親に学費を出してもらい大学に行ったが、ある舞台で電気が走るような衝撃を受けてから、芝居の世界にのめり込んでいった。必要に迫られ大学にも行かずバイトに明け暮れる日々を送り、やがて中退。良夫は、大学を辞めた時、父親に勘当された。
劇団員全員がアルバイトをかけ持ちをして、舞台のために金の工面をしていた。だから良夫は、そうすることも俳優業の下積みになるとさえ信じて疑わなかった。
良夫もできることはなんでもやった。レストランの皿洗いから、清掃のバイト、コンビニ店員、エキストラ他。
舞台を優先するためシフトが自由でないとならない。その為、定職にはつかなかった。
色んなバイトを経験できたのは、良かったと良夫は思っている。人間観察もできたし、俳優としての役作りの参考にもなったから。
ところが順風満帆とは言えないまでも、ある意味充実した生活を送っていた日々にいきなりピリオドを打つ日が来るとは……
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