24人が本棚に入れています
本棚に追加
「お待たせしました。田代さん」
良夫が、待ち合わせ場所の駅に着くと、すでに田代祐奈が来ていた。あの、女性インタビュアーだ。
今日の良夫の仕事は、田代さんのレンタル彼氏。
一緒に出かけて欲しいところがあるそうだ。だから、良夫もそれに見あった格好と役作りをいている。
「ここからタクシーでよかったんですか?」
「最後までは、いたくないの。早々に失礼するつもりなので」
二人は並んでタクシー乗り場まで歩く。週末、昼前のこの時間、道ゆく人は休日をのんびり過ごしているようだが、田代さんはどこか緊張している様に良夫には見えた。
タクシーは運よく止まっていたので、すんなりと乗ることができた。
「ーー一丁目までお願いします」
高級住宅街だ。
打ち合わせで田代さんから聞いたのは、お世話になってるプロデューサーの家でのランチ会がある。
良夫は「コロナ禍でそんなことするのか?」とツッコミを入れた。世間にはいろいろな都合があるようで、田代さんも断れなかったそうだ。
何か訳ありのようで、良夫に彼氏のフリをしてついてきて欲しと頼まれた。二時間のレンタルで破格の金額を提示されたら断る理由はない。
最初のコメントを投稿しよう!