令和15年 回想 折田民雄①

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令和15年 回想 折田民雄①

民雄は、自身がまだ高校で教師をしていたころ、そして礼人が高校3年生で生徒だったころの頃のことを思い出していた。 礼人の、悲痛な謝罪の声を思い出していた。 「ごめんなさい。ごめんなさい」 その日、民雄の家を訪ねてくるなり、玄関先で頭を地面になすりつけて謝り続ける礼人を見て、民雄はひたすら困惑していた。 太陽が照りつける夏の日。 礼人の下でにじんでいる水は、汗だろうか。それとも涙だろうか。 「どうしたんだ多部。  今日は学校だろ。いくらユーチューバーになるからって授業ぐらいは出ておいた方がいいぞ」 「ごめんなさい。ごめんなさい」 壊れたように繰り返す礼人に民雄は頭をかく。 「とにかく、中入れ」 妻が死んで、すっかり広くなってしまった一軒家に、民雄は礼人を引きいれた。 パタンと扉を閉める。 『暴力教師!ヤメチマエ!』 扉には真っ赤なスプレーでそう書かれていた。
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