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「どうかしましたか」
千鶴さんは何やら文書を作成しているようだった。
作家業のものだと思うけど、僕に見せちゃって平気なんだろうか。
「あのさ、この漢字がどうやっても出せないんだけど」
千鶴さんは手元にあった一枚の紙に書かれた文字を指さす。僕には読めない漢字だった。
「読み方は辞書で調べたんだけど、どれでやっても出てこないの」
「あぁ、そういうときは、これを使ったらいいですよ」
「え? 何それ、そんなすぐにできちゃうの」
そうして僕は手書き機能の説明をした。
マウスで入力したい漢字を書けば、コンピューターが自動で読み取って変換候補を出してくれる。
「これですよね」
「そうそう、これ! うわ、こんな機能があったなんて、最近のパソコンは優秀だねぇ」
いや、このシステムはかなり前からあったと思いますよ、とは言えない。
新たな発見に目を輝かせている千鶴さんの表情をわざわざ曇らせる必要はない。
「僕もよくお世話になってます。ここをクリックするとさっきの画面になりますから」
「わかった! ありがとー」
千鶴さんのまぶしい笑顔が見られただけで僕は嬉しいです。
再び作業に戻った千鶴さんから離れて、自分の机に戻る。
千鶴さんはどうやら忙しいみたいだ。
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