第4話 縁結びの神様

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「蓮くん、もうちょっと待ってね。これを終わらせたら休憩にするからさ」  僕が暇を持て余していることは筒抜けだったようだ。  勤務態度に問題ありだろうか。 「それなら、コーヒーを用意しますね」  僕ができることといえばそれくらいだ。  今回の休憩は何かしらのゲームに発展するのだろうか。たまには僕のほうからゲームを提供してみてもいいのだろうか。  炊事場に向かい、コーヒーを淹れる。  新年度を迎えるにあたり、コーヒー以外の飲み物を用意してみようかな。千鶴さんが季節にあわせて紅茶のフレーバーを変えているように。  そんなことを考えながらいつもよりゆっくりとコーヒーの準備をした。  コーヒーの香りで千鶴さんを急かしたくない。僕はこういうところをちゃんと弁えているのだ。 「あっ、いい香り。よーし、もうちょっとだから、すぐに終わらせるよ」  僕の心遣いは空振りに終わった。  そんな、僕が淹れたコーヒーのために仕事を雑にしないでくださいよ。 「はい、終わり! 蓮くん、おまたせー」  千鶴さんの「もうちょっと」は本当にもうちょっとだった。  千鶴さんはこういう程度を表す言葉を適切に使ってくれる。
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