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「いえ、そんなことは。なんとなく人の気配がしたものですから」
肩透かしを受けたような気分で僕は自分の机に戻った。
そうだ、電話が鳴るケースだってあるじゃないか。
もしくは、ホームページ上でメッセージとか。
「あれ、蓮くんはもう休憩おしまい?」
「いえ、ちょっと確認したいことがあって」
千鶴さんはテーブルでコーヒーを飲みながら、ゆっくりとしている様子だった。
ゲームが割と早く終わってしまったので、まだ仕事に戻る気分ではないのだろう。
静かにお気に入りのマグカップを見つめる千鶴さんもかわいかった。
スタンバイモードになっていた自分のパソコンを立ち上げ、ホームページをチェック。
依頼に関するメッセージは届いていなかった。
これは困った。今日はこれ以上語ることがなく終わってしまうかもしれない。
そのときだった。僕の机上の電話が光とともに鳴り響く。
そうか、僕があっさり負けてゲームが早く終わってしまったぶん、少しタイムラグが発生したんだ。
わかってしまえば簡単なものだ。
さて、今回はどんな相談だろう。
僕ははやる気持ちを抑えながら、ゆっくりと受話器に手を伸ばす。
「お待たせいたしました。こちら、今井探偵事務所です」
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