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「御朱印帳ですか」
「そ!」
遊びに行くんじゃないんですよ、と言いかけたが、やや食い気味の千鶴さんの発声に遮られた。
もう何も言うまい。
千鶴さんが嬉しそうなのだから、それでいいのだ。
「そういうのもやってたんですね」
「あれ? 言ってなかったっけ」
千鶴さんは何もかも僕に打ち明けているつもりなのかもしれないけど、僕は千鶴さんのプライベートはほとんど知らないのだ。
秘密にされているわけではないので良しとしよう。
「じゃあ、すぐに出ますか?」
「うん、早くしないと社務所が閉まっちゃうかもしれない」
あの、僕たちの目的をお忘れじゃないですよね。
そんなに有名な神社なのかな。僕はその神社の場所はもちろん、名前さえも知らなかったけど。
コートとマフラーだけでなく耳当てまで装着して万全の防寒態勢をとった千鶴さん。
今日はそこまで寒くはないと思うけど、あの白くてふわふわした感じの耳当てはとてもかわいいので、文句は何もない。
事務所を出て駅へと向かう。
今回は千鶴さんが案内してくれるようなので、僕は何も考えずについて行くだけだ。
道中で今まで巡ってきた神社の話をする千鶴さんは、それはもう活き活きとしていて、いつにもましてかわいかった。
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