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約三十分の移動で辿り着いた浪枝神社は、僕が想像していたより広く、なかなか立派なものだった。
境内を歩く際の作法などは千鶴さんの真似をすることで間に合わせた。
電車を降りるまではテンションが高かった千鶴さんも、神社が近づくにつれて静かになり、今は別人のような佇まいとなっている。
「えっと、とりあえず社務所に問い合わせてみればいいですかね」
「そうだね。神様にご挨拶をしたいところだけど、今日は仕事だからね……」
本殿を前にしてかなり残念そうな千鶴さんを連れて、社務所に顔を出す。
千鶴さんの手に御朱印帳はまだない。
「あの、すみません。先ほどお電話いただきました、今井探偵事務所の者ですが」
「あっ、はい。わざわざお越しいただいてありがとうございます。少々お待ちいただけますか」
巫女さんらしき人が相手をしてくれたが、どうやら僕たちが来ることは把握していたようだ。
電話をかけてきたのは男の人だったから、その人を呼びに行ったのだろうか。
「お待ちしてました。こちらへどうぞ」
そう言いながら現れた男の人は僕と同じくらいの年齢に見えた。
この人が依頼人ということだろうか。
格好は巫女さんと似たようなものだった。男の人の場合はなんて言うのだろう。
かんなぎ、だったか。
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