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「それでは、この暗号のようなものを解読して、バツ印の意味や、隠されているかもしれないなにかを探したい、ということですね」
千鶴さんが端的に依頼の内容をまとめる。
抑揚のない話し方で、千鶴さんの心境が読み取れない。
「そうですね、そういうことです」
「このことは、神主さんにはお伝えしているのですか」
「いいえ……。まだ話していません」
「今はいらっしゃらないのですか」
「はい。今は氏子の方にお会いするため、外出中です」
電話口で渡会さんが声を潜め、急いでいたように思えたのは、そういうことか。
神主さんがいない間に探偵に宝探しを依頼した、という。
「では、神主さんが戻られる前に、この探し物をしてほしい、ということですか」
「そうなります……」
なんていうか、話が早い。
千鶴さんは状況を正確に理解したようで、渡会さんは胸をなでおろすような仕草を見せた。
吉井さんは表情を変えずに落ち着いている。
「わかりました。依頼は引き受けたいと思いますが、しかしこれは私の専門とは少し違いますので、ご期待に添えるかどうかの保証はできません。それでもよろしいですか」
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