龍皇黒檀

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龍皇黒檀

この世には しばき屋と呼ばれる輩がいる! 男達は真の男を目指し木刀を握りしめる。 剣の腕を磨き、剣士として名声を掴み取る者もいれば、 木刀でしばき合い、覇者の称号を夢見る男達もいる。 五大神國しばき祭り。 木刀で相手の頭をしばき割る狂った祭りだ! 死人続出の荒くれ祭りに参加する男達は、狂ったようにしばき合い國民を沸かせる。 過去に覇者として君臨していた男が言った。 「降参するぐれぇ~なら死んだほうがましだ」 しばき合いは意地と意地のぶつかり合いだ。 しばき屋になるような男はみんな自分がこの世で一番強いと思っている。 弱いと思われたくない男達なのだ。 真のしばき屋は絶対に降参しない! 降参して生き長らえても、待っているのは腰抜け呼ばわりされる人生だ。 古来より受け継がれてきた神聖な男祭り。 男達の自尊心は勝ち続ける事により膨らみ 誇り高きしばき屋の魂には 降伏と言う文字はない! 五大神國 五の國 貧困な親子がいた。 母一人子一人。 母は若くして病に倒れ、五歳の子は一人この世に残された。 悲しみに暮れている暇はない 食わねば死ぬ! 子は死にたくなかった!生きたいと思った!食える物は何でも食った! カエルやネズミも食った!虫も食った!草も食った!残飯も食った!川の水をガブガブ飲んだ! 犬や猫の死骸を食った事もある。 盗みを働き、店の店主に半殺しにされ、川に放り投げられた事もある。 汚ねーガキだと、町のゴロツキにボコボコにされながらも目はギラつかせていた。 町のハイカラなお姉さんは、豚の死骸でも見るような目付きで唾を吐く。 同世代の子供達からは、石を投げつけられ追い回された。 子は山に逃げた。 全ての人間が嫌になり逃げた! しかし! 山は魔物の巣だ! 知ってて山に入った! ほとんど自殺志願者だ! 山に町の人間は近づかない! 危険だから近づかない! だから山に行く! 人間のいない世界に行く! 母が良く言っていた! 山には怖い魔物がいるうぅ! それがどーした! そんなのホラ話しだろう! 五歳の子供だぁ! 後の計算なんかしてねー! 人間は悪魔だ! 静かに暮らしたい! しかし! 魔物は実在する。 魔物から見れば子は飯。 静まり返った山の中で、心が落ち着いたのはほんのわずかな時間だった。 腹を空かせた犬の魔物が子を見つけ食いたいと思った。魔物にしてみれば超日常的な事であり超当たり前な事である。 目の前で自分を威嚇する魔物を見て、子は単純に食われると思った。 魔物は目を血ばらせながら子に飛び付き、荒々しい鼻息で子の首を食い千切ろうと噛みつく。 子の目から滝のように涙が出た。 静まり返った山の中で泣き叫ぶが誰も助けてくれない。元々母意外の人間に優しくされた記憶もない。 殺らなければ殺られる。 子は泣きわめきながら魔物の首を掴んだ! 町でいる時は、人間に攻められてもやり返す事が出来なかった。 人間に歯向かう勇気がなかった。 母意外の人間にビビっていた! だが今は…… 本気で殺されそうだ! ぶっ殺してやるぅ! 子は気づいていなかった。 自分の未知なる力に。 神がたった一つだけ子にご褒美を与えた。 それは…… 【怪力】と言うご褒美だぁ! 子は魔物の首をちみきった! 子が殺されそうになり、とっさに思い付いた反撃がちみきる事だった。 死の狭間で母に叱られホッペをつねられた事を思い出した子は、泣きながら魔物の首をちみきった! 必死でちみきった! 子の規格外の怪力でつねられた魔物は、泣けるほどに極上の痛みを味わっていた。 瞬時に肉を引きちぎられた魔物は、噛む力を緩めてしまうほどの激痛に泣き叫んだ。 子は魔物を振りほどき、今度は子が魔物に飛び付いた。 魔物の黒い毛に覆われた胸板に馬乗りになり、魔物の両目に親指をねじ込んで、渾身の力で魔物の頭部を地面に叩きつけた! 泣きながら叩きつけた! 何度も何度も叩きつけた! 自分では理解していない怪力で叩き潰した! 子の馬鹿げた怪力は、魔物の頭部をグチャグチャに破壊してしまい、子は魔物の返り血を大量に浴びていた。 五歳の子が魔物に勝利した瞬間…… 子は思った…… こいつ弱い。 戦いに勝利し、気分的に優位に立った子は…… 腹が減った! 子は魔物の肉を食した。 禁断と言われる魔物の肉を食いまくった! 五大神國の古くからの言い伝え。 【魔物の肉なんか絶対食うじゃねえぞ】 子は…… そんな言い伝え知った事ではない。 死ぬ程腹が減っているから食う! 子は満腹になるまで魔物の肉を食らった。
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