第1話 秋雨 side

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高層ビルや商業施設などを彩る、電光掲示板。 書店の店頭に並べられた、ファッション雑誌。 家電量販店に設置してある、数台のテレビ。 電車の手摺付近にある小さな広告や、スマホの隅に流れるちょっとした広告まで。 日常生活を送る上で、を見ないタイミングはほとんどと言っていい程ない。 それくらい今大注目の人気モデル、“NAO”。 「かっこいいなぁ、“直”。」 画面や紙越しに“NAO”を見る度、僕は誇らしくなるのと同時に・・・ちょっとだけ寂しくなる。 僕が知ってる“笹浦 直”が、どんどん遠くに行ってしまうような気がして。 「昔は僕が一歩先を歩いてたはずなんだけどなぁ。」 『まって、あきちゃん!!』と僕を追いかけて来ていたはずの直。 でも、いつしか直は僕より一歩先に・・・いや背中すら見えなくなる程先に進んでいた。 まるで僕なんていらない、とでも言うように。 「・・・まぁ、ただの幼馴染がいつまでもずっと一緒にいられる訳がないもんな。」 そう無理矢理言い聞かせ、微かに痛む胸に蓋をした。
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