荒川くんの方程式

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なんか、 会いたいとか柄にもなく ふと思って。    つーか、 やっぱ多少は乳牛のこと 気になってたんだと思う。 だったら、 会っちまえ。 会ってどーなるかは、 知らね。 花井は目をパチクリして 頭を掻いた。 「何、お礼参り?」 「俺いちおーヤンキーは 卒業してるつもりなんすけど。 つか乳牛にお礼参りする 理由がねぇ。」 「冗談よ(笑)」 コロコロと笑った花井は うーん、と顔をしかめた。 「どこだったかな、 日渡ちゃん、採用試験 受かったときに中学に お手紙くれたのよね。 どこだったかな、」 「んだよ、もう ボケが始まったか。」 俺がハッと笑うと、 花井はまじまじと 俺を見上げた。 「ねえ、高校でも 先生にこんな態度取ってる とか言わないでね?? もっと落ち着いてるのよね? わたし、不安(笑)」 とってねーよ、さすがに。 高校ではもう少し ちゃんとしてっけど、 なんでか花井といると、 昔の自分に戻ったみたいな 錯覚を起こす。 「大丈夫、ちゃんと してっから。 で、日渡先生、 どこの高校いるわけ?」 俺にもう一度訊ねられて、 花井はようやく高校名を 思い出した。 日渡先生は、けっこう 有名な私立で先生してる らしい。 たしかカトリック系 だよな、あそこ。 俺じゃ偏差値足りなすぎて 入れねー(笑) 「ん、ども。 じゃあ俺、もういくわ。」 俺が小さく頭を 下げると、花井は、 「なんだ、これが 訊きたかっただけなのね。」 と呆れたように笑った。 や、 母校に久しぶりに 来れて、 花井と久しぶりに 話せて、 それも良かった、けど。 「別にそういう わけじゃねーよ。」 やっぱり、素直に なるのはハードル 高いから、 中学生のときみたく、 そっけないことを 言っておいた。 花井はそんな俺を見て クスッと笑う。 「はいはい。 日渡先生のとこにいくの?」 「んー、まあ。」 「そう、よろしく 伝えといてね!」 おうよ、任しとけ。 俺は母校を後にした。
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