荒川くんの方程式

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俺がゆっくりと 頭をあげると、 日渡先生は少しだけ 驚いてて、 でも、 すぐに甘い笑みを 浮かべた。 「・・・・ん、 ありがとう。 ・・・・なんか、 荒川くん、本当に 素敵な人になったね。」 じゃあ、俺のこと 男として見てくれる? ・・・・・・なんて、 結婚した女に訊くのも、 ヤボだよな。 だから俺は、 「だろ?? 惚れても良いよ。」 なんて得意気に 言ってやった。 この言葉を聞いた 日渡先生は、 「荒川くんったら!」 って楽しそうにケラケラ。 これでいいんだ。 これで。 俺は伸びをすると、 やれやれと肩を回した。 「じゃあ、もういくわ。 お腹に子どもいんだから あんまり無理すんなよ。」 「ふふっ、 気を付けるねっ。」 日渡先生はこう言って、 俺に手を振る。 2回目の、お別れだな。 今度もやっぱり、 俺から去っていくんだ。 「じゃあな、 日渡先生。」 最後はあえて、 『日渡先生』 って呼んでやった。 何でかな、 やっぱ、ちょっと 妬いてんのかも、 早川って男に。 日渡先生は、 それでもちゃんと 「荒川くん、 また遊びに来てね!」 って言ってくれて 今だけ『日渡先生』に 戻ってくれた、なんて 思う俺、大分メルヘンだわ。
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