ごめんなさいのロールケーキ

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ごめんなさいのロールケーキ

耳の調子はもう殆ど完治に近いのでは、というくらいまで回復してきているのだけれど、とはいえ暫く片耳に違和感があったので、その間はとにかくストレスが凄かった。 片側だけが聴こえにくいので、体が無意識に、正常な耳の方から聴こうとしていたんだと思う。 普段は意識しなくとも両耳から入ってきていた音。そのバランスが少し崩れるだけで、こんなにも疲れるのかと痛感した。 そんなこんなでついついイライラを溜め込んでしまっていた私は、昨日とうとうドカーン!と盛大に噴火してしまった。 朝から170cm越えの男たちがゲームや漫画三昧で、あっちでゴロゴロ、こっちでゴロゴロ。 私は耳鼻科へ行くためにドタバタ準備をしている最中だったので、「ちょっとくらい何か手伝ってくれー!」と爆発してしまったのである。 プンスコ状態の私は、午後から完全ストライキを決め込み、自室に籠城していた。 さすがにこれは尋常ではないと察したのか、家族の誰も、私の元へは来なかった。 そして一人になって、私はスッキリしたかというと、逆にめちゃくちゃ後悔した。 あんなに爆発する必要あった? イライラしてたのは事実だけど、さすがに言い過ぎじゃない? これって、前に某ニュースで見た『フキハラ(不機嫌ハラスメントですって)』ってやつじゃないの? そもそも私がイライラしてるのって、家族には関係ないのに、何で矛先向けてしまったの? あーーーー、馬鹿! 私は馬鹿野郎だ!! とまあ、閉じこもったは良いものの、次々に襲う自己嫌悪の波。 しかし、いかんせん意固地な私。今更何事もなかったように部屋から出てきて、「ごめーん(てへぺろ)』なんて真似も出来ない意地っ張りなので、タチが悪い。 結局そのまま一晩過ごしたものの、朝起きると、次男がせっせと朝食を用意してくれているではないか。 シュガートーストを作るために、食パンに砂糖を塗るだけの作業なのだけれど、いつもは長男が次男の分もやってあげているのに、今朝は次男が二人分作っている。 しかも、よく見たら食パンに塗りたくっているのは砂糖じゃなくて塩!! 「ちょおおおおい!!」と慌てて止めたけれど、次男なりに一生懸命な姿が微笑ましくて、益々申し訳ない気持ちになった。 やっぱり、自分が悪かったと思うところは、ちゃんと謝らなきゃ駄目だ。 しかし相変わらず素直じゃない私は、耳鼻科で点滴を受けながら、家族に「昨日はごめんなさい」とLINEを送った。 どんな返事が来るかなと、ちょっと怖い気持ちも正直あったのだけれど、みんな「いいよ」って返してくれた。 胸のつかえが、スッと取れた気がした。 謝るって気持ちがいい。許して貰えるとすごく嬉しい。 帰りに買い物がてら、ロールケーキを買った。 帰宅して、録画していたアニメを家族揃って鑑賞しながら食べたロールケーキは、最高に美味しかった。
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