生まれたばかりの赤ちゃんが世界を滅ぼそうとしてるんだが?

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 ………………。 「救世主様じゃー」「うちの学校から救世主が!」「俺らのクラスメイトって、勇者の転生体だったのか!」「すげー」「私の、担当するクラスの生徒が……」  誰か教えてください。僕にはさっぱりわかりません。何でこんな事になってるんだろう。  僕は確かに、魔法を発動した。  特大の魔法だった。父様じゃあるまいし、「あ、手元がすべった!」とか言って失敗するはずはない。あれは、まぎれもない成功だった。  事実、世界を包み込んだ魔力は、大気や水源、土壌に至るまで全てを汚染していったのに。  こんな真相あんまりだ。 「空が青いぞー」「空気ってこんなに澄んでるものなのね」「水がキレイだよ」「土から直接植物が生えてる」  確かに世界は滅亡した。滅亡したのだ。  汚染されまくって、もう何十年か先には滅亡するしかなかったボロボロの世界は……。  知らなかった。  この世界は汚染されたって事。そして、汚染されてたものを再び汚染しようとしたら、一周ぐるっと回って浄化しちゃうって事。  悪魔界とよく似た、紫色の雲か浮かぶ赤い空は大気汚染で、水がドロドロしてたのは水質汚染、土が真っ黒な炭みたくパサパサしてたのは土壌汚染……。 知ってたら、長い時間をかけて貯めた貴重な魔力を使わなかったのに。  気づいたら、父さんと母さんが近くに来ていて、抱きしめられていた。  そして「勇者なんだろうが転生体だろうが、関係ない。お前は俺達の自慢の子供だ」なんて言われた。 「お前は気づいていたんだな。この世界の事。他の子供達は騙せても、天才のお前までは騙せなかった」 「未来を夢見る子供達に、未来のない世界の話をするなんて事、私たち大人には出来なかった……。あなたは優しい子ね」  まんまと騙されてましたし、優しいわけじゃありません。全て勘違いです。
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