生まれたばかりの赤ちゃんが世界を滅ぼそうとしてるんだが?

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 七歳になりました。僕の本来の年齢に追いつきました。時の流れって早いですね。大人になると一年があっという間にすぎるというけれど、そんな感じでした(子供だけど)。  病気もしてないし、体力もあって、丈夫で健康に。立派に育ちました。  本当の両親ほどではありませんが、今の両親も敬います。うむ、苦しゅうない。立派な功績ぞ。おほほほほ……。ちょと、何かが違いうような気がします。女王様キャラと魔王キャラは違う。  さて、僕は永久に前の世界とさよならをしたわけですが、空いた時間に一人故郷を想ったりしてさみしくて泣いたりはしません。世界なんてきっとどこも似たようなものなんです。むしろ、病院から出て初めて目にしたのが、僕たち悪魔の住んでいた魔界とそんなに変わらない景色でがっかりしたくらい。  だけど、この世界は元の世界には無いものが沢山ありました。  色鮮やかで美味そうな食べ物もいっぱいあって、おもしろい遊びもいっぱいです。僕のお気に入りは車で一時間の屋内遊園地です。知る人ぞ知る有名な遊園地に、年に一回お休みの日に、両親に連れてってもらいます。夢の国はホントあった。  科学技術、というものがすごく発達して、この世界はとっても豊かなんだそうです。  玄関や窓には、病院にあるような空気清浄フィルターという機械がありますし、外に出なくても一日中遊べるように、ショッピングモールや娯楽施設、会社のビルや駅とかが全部地下道で繋がっていたりします。  見につくもの全てがすごくて、片っ端から試しているとすぐに時間がたってしまいます。  母さんは、「有栖(ありす)は好奇心いっぱいのやんちゃな子ね」と、言って笑います。  父さんは、「大人になると、何気ない日々に刺激を感じられなくなるんだよな」と、羨ましそうにします。ちなみに有栖(ありす)という名前は、僕が世界滅亡宣言した時の言葉を聞き間違えて、名付けてくれたようです。男なのに。  それはそうと。  そんなに遊んでばかりじゃありません、ちゃんと勉強だってしてます。学校に言って、物の数え方や字の読み方を習ったりします。そんな事して何になるんだ(デュフリードは教えてくれなかった)と、僕は初めの頃そう思ってました。お腹が満たされるわけでも、敵を倒せるわけでもないのに、って。これぞ才能の無駄遣い。なので先生に、ご飯を作る方法や強くなる方法の方が知りたいと言いました。  けれど、先生は騙されたと思って勉強してごらん、とへらへら笑って誤魔化します。勉強ができるようになれば、ご飯を美味しく作れる方法や、相手より強くなれる方法が分かるから、と言うのです。  そこまで言うのならと、僕はやってみます。  嘘つきは針千本です。先生と約束しました。破った人は「ロクデナシ!」と後ろ指さしてもいい魔法の約束術だと友達から聞きましたので。存分に活用させていただきました。 人の貴重な人生の時間を使うのです。それくらい当然です。  それから勉強をちゃんと頑張るようになって、あっという間に僕は大きくなっていきます。子供の成長は早い。  先生の言ったことは本当でした。勉強する事によって、我が家のご飯はちょとだけ美味しくなったし(調味料の使いかたを覚えた)、敵より強くなりました(害獣退治でネズミの天敵であるご近所の飼い猫さんに活躍してもらいました。学校新聞にも載った)。  先生は嘘つきじゃありませんでした。針千本も後ろ指もなしです。
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