生まれたばかりの赤ちゃんが世界を滅ぼそうとしてるんだが?

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 さらに年月は流れて、小学校の卒業式が近くなった頃。  リビングのソファーで魔力強化の瞑想がてら、来るべきに備えて仮想敵と戦闘シミュレーションをしてる時でした。 「お前が生まれた事は大変だったなあ」と、父さんが話しかけてきたのです。邪魔です。でも邪険にできません。最近父さんは、元気がないのです。あの小さかった有栖(ありす)がもう中学生に……、優秀で手のかからない子になって……とか言って、時の流れの残酷さに浸ってるからです。 「世界を滅ぼしてやるぞー、とか言ってたように聞こえたから、てっきり悪魔か魔王の子でも生まれてしまったんじゃないかと思ったよ」  父さん正解です。子供が生まれるからと張り切りすぎて、過労気味になった影響で電波な幻聴を受信してしまったせいじゃありません。(父さんはあの時のことを、そう思いこんでいるらしい。母さんは出産ストレスのせい) 「卒業式のスピーチ楽しみにしてるからな」  涙ぐみながら言わないでください。そういう事は娘を持った父親が思う事でしょう。中学校とか高校とかの卒業式が心配です。  卒業式のスピーチ。きっと両親は度肝を抜くでしょう。僕の二度目の世界滅亡宣言なのですから。きっと全ての内容を聞き終えた後は、今までの不敬を許してください! と謝り倒すに違いありません。散々子ども扱いしてくれましたし(本来の年齢を考えても未成年だけど)、弱者の分際で悪魔に指図していたのだから(教えられた内容は僕の知らない事ばかりだったけれど)。今の内に心の準備をさせておくのがせめてもの情けです。大丈夫です、命までは取りません。ボロ雑巾の様になるまで、こき使うだけです。一応育ててもらった恩がありますから。僕は寛大。
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