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「ありがとう」
「わっ!」
照谷さんが振り返るのに椅子を少し動かしたので、近くに膝立ちになっていた私はバランスを少し崩してしまい、照谷さんの背中に泡の付いた手で掴まる。
「ごめん、……大丈夫?」
「大丈夫。私が近くに居すぎたから…」
パッと顔を上げると、近距離に照谷さんの顔があった。
照谷さんの濡れた髪から、ぽたりと雫がおちる。
前髪を上げて露わになったおでこ。
濡れた背中に添えた手からは熱さと力強さを感じ、見つめられ色気にくらりとする。
普段は髪を下ろしていて、見たことがない姿
に胸がギュッと苦しくなる。
堪らなくなり、その後の言葉が何も出てこない。
そのまま、目を伏せてそっと照谷さんの背中寄り添う。
「あ……、あの、…あ、彩?」
「ん?なぁに?」
「抱きつかれると、…背中に当たるんだけど…」
その…胸が、と呟くように言われる。
「ん。知ってる。わざとくっつけてるから」
「え!?あの…、わざとって……」
くっついた背中から照谷さんが焦っているのがわかる。
「ゆぅきさんが色っぽくて、素敵でくっつきたくなっちゃったんです」
濡れた背中にちゅっとキスをして、お腹に腕を回してもっと身体を密着させる。
濡れた素肌が密着し、熱を感じながら、少しずつ水分が冷えていく。
肌から直接温もりが伝わりもっと触りたくなる。
「彩、煽らないでって言ったよね?」
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