#30 酔った彼女の誘惑に勝てますか?

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「ありがとう」 「わっ!」 照谷さんが振り返るのに椅子を少し動かしたので、近くに膝立ちになっていた私はバランスを少し崩してしまい、照谷さんの背中に泡の付いた手で掴まる。 「ごめん、……大丈夫?」 「大丈夫。私が近くに居すぎたから…」 パッと顔を上げると、近距離に照谷さんの顔があった。 照谷さんの濡れた髪から、ぽたりと雫がおちる。 前髪を上げて露わになったおでこ。 濡れた背中に添えた手からは熱さと力強さを感じ、見つめられ色気にくらりとする。 普段は髪を下ろしていて、見たことがない姿 に胸がギュッと苦しくなる。 堪らなくなり、その後の言葉が何も出てこない。 そのまま、目を伏せてそっと照谷さんの背中寄り添う。 「あ……、あの、…あ、彩?」 「ん?なぁに?」 「抱きつかれると、…背中に当たるんだけど…」 その…胸が、と呟くように言われる。 「ん。知ってる。わざとくっつけてるから」 「え!?あの…、わざとって……」 くっついた背中から照谷さんが焦っているのがわかる。 「ゆぅきさんが色っぽくて、素敵でくっつきたくなっちゃったんです」 濡れた背中にちゅっとキスをして、お腹に腕を回してもっと身体を密着させる。 濡れた素肌が密着し、熱を感じながら、少しずつ水分が冷えていく。 肌から直接温もりが伝わりもっと触りたくなる。 「彩、煽らないでって言ったよね?」
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