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「じゃあ、俺の傍で祈って」
八重樫君は私に近づき、そっと抱きしめた。
「今はまだ無理だけど、いつかきっとこの気持ちが落ち着いたらね」
「双葉ってどんだけ鈍感なの? 俺がずっと好きなのは双葉だよ」
八重樫君はそっと私の唇に彼の唇を重ねた。
「俺は双葉のコロコロ変わる表情見てるとすごく楽しい。映画館で双葉見つけた時、この子と一緒に見れたら何倍も楽しいんだろうなって思ってた。だから双葉だって確信持てた時、すごく嬉しかった。これは運命なんだって思えたんだ」
運命……
私がずっと夢見てしまっていたその言葉を八重樫君の口から、しかもその相手が私……。
「双葉は、俺の押しに負けて付き合っただけで本当は俺の事そんなに好きじゃないのかもしれないって不安になることもあった。押していれば離れないと思ってたけど、部長と2人でいるのを見たり、2人で行った食事のことを楽しそうに話すのを見たりしていると辛くて、不安が強くなっていった。
キスしたら束縛したくなる。こんな子供じみた俺なんか部長と比べられたらすぐに捨てられてしまう気がしたから、何もしない俺でも俺を選んでくれるなら一生双葉を幸せにするって決めてた」
そんな事を八重樫君は思ってたんだ。
私が苦しんだ日々は八重樫君も苦しんでいた。
「本当は色々準備が整って言いたかったんだけど、こんなに双葉が辛い気持ちになっているなんて思ってなかった。ごめん」
私は精一杯首を横に振った。
「ずっと2人で住む家を探してたんだ。明後日、最後の候補物件の内見する予定だったし、もう一つ準備してるものができあがる予定だったんだけど、まだ手元にないから今はこれで」
八重樫君が差し出した手の中を見るとあの時買ったペアの縁結びの御守りがあった。
ずっと肌身離さず持っていたんだ。
「こんな俺だけど一生傍にいてくれますか? 」
私はピンクの御守りを受け取り、目一杯八重樫君を抱きしめてキスをした。
2人が幸せになれる最高のキスを。
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