貧しい青年の願い

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ある国に一人の貧しい青年がいました。 その青年は毎日懸命に働きましたが、どれだけ働いても貧しいままでした。 それでも悪事には手を染めず、ひたすら真面目に働き続けました。 「ああ、神様。もしいらっしゃるなら私に大金を与えてください。」 青年はそんなことを日々願いながら暮らしていました。 そんなある日、彼の目の前に神々しく輝く老人が現れました。 「わしは神じゃ。そなたの真面目な働きぶりは天から見ておった。一つだけ願いを叶えてやろう。」 神と名乗るその老人は青年に優しく語りかけました。 「本当ですか。では私に大金をください。」 青年は自分の祈りが天に届いたと感激し、老人に向かってその願いを告げました。 「よろしい。いくらでも与えよう。」 そう言うと神は手に持った杖を一振りしました。 すると次の瞬間、空から大量の紙幣が降ってきました。 「では、さらばだ。」 そう言い残し、老人は青年の前から姿を消しました。 青年はそんな老人の動きには目もくれず、ひたすら空から舞い落ちる紙幣をつかみ続けました。 「やった。これで明日から大金持ちだ。」 青年は大量の紙幣を抱えながら歓喜の叫びをあげました。 その後、その国は大量の紙幣が出回った結果、ハイパーインフレに陥って貨幣の価値はほぼ0となり、青年は貧しいままであったとか。
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