これまでのあらすじ

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これまでのあらすじ

 東雲探偵事務所の所長である六道から《死神の後継者》になることを告げられた雨宮深雪だが、未だに決心がつかないでいた。  現在いる事務所のメンバーは六道が直々にスカウトしてきたメンバーで、六道の死後、それぞれのメンバーはどうするつもりか。何故、東雲探偵事務所で働いているのかを深雪は尋ねてゆく。その中でオリヴィエや奈落の語られなかった過去にも触れるのだった。  そんな折、俊哉から連絡があり、片山奏太(かたやまそうた)というストリートの少年を紹介される。奏太は《ガロウズ》というストリートチームに所属しており、《死刑執行(リーパー)に深雪にチームを助けてほしいと頼むだった。  奏太が言うには、《ガロウズ》は新興の小さなチームで、暴力沙汰や抗争とは縁のない温厚なチームだった。それが規模も大きく歴史のある《グラン=シャリオ》というチームを襲撃して、数十名近くのメンバーを皆殺しにしたのだという。  奏太が知る《ガロウズ》の(ヘッド)や幹部メンバーは、そんな残酷なことができるような人物ではなかった。本当は何があったのか、真実を調べるとともに、《ガロウズ》のメンバーの《リスト執行》を止めて欲しい。それが奏太の依頼だった。  奏太の依頼を受けて《ガロウズ》による《グラン=シャリオ》の襲撃事件を調べていく内に、深雪は《ウロボロス》の事件と酷似していることに気付く。そして情報屋・エニグマの手を借り、《グラン=シャリオ》の副頭(サブヘッド)である九鬼(くき)への聞き込みによって、両チームの接点が《エスペランサ》というカジノ店にあることを突き止めるのだった。  ところが《エスペランサ》を経営していたのは、《アラハバキ》に所属する京極鷹臣(きょうごくたかおみ)――――かつて《ウロボロス》を壊滅させた因縁の相手だった。深雪は今回の事件は京極が精神を操るアニムス《ヴァニタス》を使って、《ガロウズ》を操り、《グラン=シャリオ》を襲わせたのではないかと疑いを抱く。  深雪は京極を問い詰めるものの、《ヴァニタス》を使って操った確たる証拠を掴むことができず、《ガロウズ》のメンバーは遂には《リスト執行》されてしまう。  このまま京極を野放しにしてはおけない。深雪は《レナトゥス》を使おうとするも、京極によって牽制(けんせい)される。いわく、二十年前の《ウロボロス》の事件では他のメンバーだけでなく、深雪にも《ヴァニタス》が使われていたこと。深雪の中には二十年前の《ヴァニタス》が残っており、京極の意思ひとつで発動すると。  深雪は《ガロウズ》の《リスト執行》を止めることもできず、京極に罪を認めさせることもできず、《アラハバキ》を壊滅させ新たな指導者になり、この《監獄都市》を破壊するという京極の野望を止めることもできないまま、「話は終わりだ」とばかりに店の外につまみ出され、路上に投げ捨てられるのだった。  深雪は悔しさのあまり、地面に拳を叩きつける。何もにもできない無力な自分も、高笑いする京極も、すべてが腹だたしかった。その感情は、深雪の中で確かな願いとなって形づくられる。心の底から力が欲しいと。京極の凶行を阻止し、《監獄都市》に生きる人間もゴーストも守れるだけの力が欲しいと。  そして深雪は所長室の扉を叩くと、東雲六道(しののめりくどう)に《中立地帯の死神》となる決意を告げるのだった。
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