1 人望ゼロ

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 宇宙船の真っ白な通路を歩いてコックピットへ向かう。  15歳になった時、本社からキャプテンを任命された。  着任したばかりでクルーの顔と名前も一致しないのに、キャプテンの仕事は気が重くなった。  僕が任された十代で構成されたチームは各銀河系でスカウトされてものの、その実態は超ブラックな本社が子供を使い捨てできるように、都合よく集めた集団。  なので身寄りがない上に、ブログに書けないくらい素行が悪い。  操舵室(コックピット)前の分厚い炭素性の扉で足を止めて、深呼吸してから覚悟を決める。  踏み出すと自動ドアが開いて元気な声でクルー達へ挨拶した。 「おはよう、諸君!」  室内はクルーが7人いて皆、作業に没頭して気が付かなかったか、わざと無視して嫌悪な態度を取ったのか。 「お、おはようございま〜す」  女子クルーがきつ目に返す。 「キャプテン・ニモイ、遅いです。やる気ないなら船を降りて下さい」 「すみません」  厳しい口調で萎縮してしまい、肩を縮めて中央の椅子(シート)へ腰を下ろした。  僕を咎めた女子。  膝丈の白いナース服に似たスーツを着ていて、長い金髪を電磁力リングでまとめている。  リングを頭の後ろにかざすと静電気で髪の毛が浮き上がり、リングの中で魔法をかけられたように、まとまってお団子頭を勝手に作ってくれるヘアバンド。  お団子になった頭に浮かぶリングが天使の輪っかに見えて可愛いと、女子に人気のアイテムだ。  僕はこの宇宙船のキャプテンだけど、前任のキャプテンは隣にいる彼女――――インドラ。  会社でも一目置かれる女子キャプテンだった。  会社の役員がこのチームを一瞬で命を落とすような、本当に危険な宙域へ派遣しようとしたので、それに文句を言ったのがキャプテンだったインドラだ。  はむかうインドラが気に入らない役員は、彼女をキャプテンの椅子から下ろして、代わりに右も左も解らない掃除係だった僕をキャプテンへ推薦した。  当の僕は役員の指示に絶対服従の操り人形。  役員への報告は逐一必要で1時間おきに通信を行う。  当然、クルーは僕を嫌い人望あるインドラの命令だけ聞く。    僕は副キャプテンどころか、宇宙船自体から嫌われてるのだ。  人望も度胸もないキャプテン、最悪のキャラクターだよ。 「新任のキャプテンは宇宙に詳しくないようなので、私がノミやダニでも解るよう解説します」  優しいようで優しくない!  そりゃ、トップの座を奪った相手へ親切に対応するなんて、できっこないよな。 「今回の探索はオークションに出典する惑星を”ブラックホールからサルベージ”するのが任務です」 「そんなことできるの? 下手するとホールに吸い込まれるよね?」 「その可能性もあります」 「帰ってこれるかな?」 「可能性の問題です」  可能性、可能性って、それ何も解らないって言ってるのと同じじゃん!
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