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「答えはこの宙域に充満するガスやチリに当たって、光を反射し二つ太陽の光源を写しています。しかもこの宙域だけガスが密集して濃度が高くなり流体となっています」
「流体? 何それ」
「水蒸気や煙が密室などで濃度が高くなると気体と液体が合わさったような状態になります。レーザーを霧に当てると光の筋が浮き出るのに近いです」
「あ〜、解りやすいかも」
「ですが恒星が二つある分、この一帯の温度は地球が属する太陽系の倍の温度になります。宇宙船に事故が起きれば100人のクルーは絶命します」
とんでもなく怖いことを冷静に言うな?
フロントガラスにはミルクの海に浮かんだような、巨大な目玉があった。
中央は吸い込まれそうな漆黒の球体。
その周辺は雲が激しく渦を巻いていて、竜巻を天空から見ているような気分だ。
珍事なのは球体の周辺がネオンのように眩しく輝いている。
宇宙素人の僕でも、一目で解った。
「あれが、ブラックホール?」
「ホールには4つの種類があり、その内の一つ、回転力を持ったカー・ブラックホールです」
「光も吸い込むのに、なんか光ってるよね?」
「ホールの回転で吸い寄せられたガスが中心の引っ張る重力と遠心力の排斥力に押し出される力で均衡を保ち、ホールにまとわりついている状態、”降着円盤”です。宙域が白いおかげでホールが肉眼でも見てとれます」
とりあえず疑問を言えばインドラが解説してくれるから助かる。
ただ話す前に大抵、ため息を吐いてから解説を始めるので、恐縮だ。
「あのホールが吸い寄せてガスを密集させ周辺を流体へ変えています。なのでガスを吸い尽くせば、この白色はいずれ消えてしまい暗闇に閉ざされます。貴重な光景です」
ここまでの疑問がすんなり解決してきた。
というより、キャプテンの僕に現地に来てまで、何も教えてくれない。
すごい嫌われてる。
聞くのがちょっと怖いけど聞くしかない。
「どうやって惑星をサルベージするの? さすがに200メートルの宇宙船が惑星を引き上げるって、風船一つで高層ビルを引き抜くようなものでしょ」
「ブラックホール情報パラドックスです」
「ブラックホール……じょーほー……何?」
「ホールは何もかも吸い取るだけではなく、ホールから外へ放出される物もあります。熱です。ホールの外周は吸引されるガスやチリで擦れ熱を生み出し、その熱はホールに取り込まれることなく外へ逃げて行きます。ホーキング輻射と呼ばれる物です」
何で説明する度、専門用語が増えていくんだ?
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