たぬきの贈り物

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 私は雌だぬきの(たえ)です。これから人間の女性に化けて山から下り近くの町に行きます。残念ながら化けていられるのは一日程です。集中出来なくなったり、時間が経つとふさふさのしっぽがひょっこり現れてしまいます。  たぬきだとばれたら、動物愛護センターというところへ通報されてしまうという噂です。通報された後のことは秘密のベールに包まれています。だって戻ってきた先輩がいないから何が待っているのかわからないんです。  わたし平凡なたぬきとは一線をかくします、たれ目可愛く、心根優しく、賢いたぬきなのです。人間に化けられるたぬきは希少な存在なのです。  町に下りるのは命がけ。リスキーですが行かなければならないのです。恋しいごすじんに会うために。  去年の秋のことでした。間違って、町に迷い込んだ時拾い食いをしてお腹を壊してしまいました。私食い意地は張っているほうなんです。  お腹を壊してぐったりしていたところ、ごすじんが家に入れてくれ手当をしてくれました。水分を与え美味しい粥、温かい寝床を用意してくれました。 「もう拾い食いなんてしたら駄目だよ。森へお帰り」  三日後、私が回復すると獣道を通って住処の近くへ送り届けてくれたんです。ごすじん様が助けてくれなかったらと考えると体が震えます。        
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