呪いの本

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乗用車は怖いのか、それとも好奇心のためか追い越そうとせず左のハザードランプを付け、停車した。 女性も怖くはあるが、そろそろと乗用車に近寄っていった。 今はまだ、あの不気味なモノもただ前進するだけだが、いつ振り返ってこちらに気づくとも限らない。 気づかれた時、何をされるかも解らない。 女性は乗用車まで近寄ると助手席側の窓を軽く叩いた。 助手席には年配の女性が座っている。 その隣の運転席にも同じくらいの歳の男性が恐怖に引き攣った顔でこちらを見ていた。 窓が半分ほど開き、運転席の男性が小さな声で言ってきた。 『ア、アレは何だ……? 観光名物か……?』 そんなわけない。 しかしその様子から男性と女性は観光客のようだ。 こんな小さな片田舎にわざわざ観光に来る者達の気がしれない。 そんな事を心の隅で思いながら女性は首を横に振る。 助手席の女性は恐怖に怯え、じっとあの不気味な黒いヒトの背中を見続けていた。 それから震える声で……。 『け、警察を呼んだ方がいいんじゃないかしら……』 確かに不審者なる者は警察に通報するべきだろう。
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