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『ニャ? カイ、中身読まないニャ……?』
『呪われると解ってて読む阿呆がどこにいる。それに早く戻って仕事を片付けたいんだ。構ってる暇はねぇ』
そうして扉へ向かって歩き出すと、右足がやけに重く感じる。
案の定、奴が縋り付くように足に抱き着いていた。
『オレ読んじゃったニャ! お前も読めニャ! オレだけ呪われるの嫌ニャ!』
さっきと言ってる事が違うじゃねぇか。
奴は卑怯な事に俺も巻き込みたいようだ。
『読まなきゃ損するニャ! 読んだ方が得するニャ! 読めニャ。読めニャよ?』
損するって何だ。
得するって何だ。
呪われるんだろうが。
しかも最後の言葉がおかしい。
これも呪いの一種か?
いや、よく考えればこれは元からだ。
『お前が読まニャきゃ、話が先に進まニャ!』
……確かに。
俺が読まなきゃこの話はここで終わっちまう。
仕方なく俺は、机に戻って本を手に取り、ページを開いた。
『何の躊躇いもなく! さすがカイニャ! 男らしいニャ!』
奴はおだててくるが、さっきまでの落ち込みはどこへ行った。
奴は鼻唄を歌いながら俺が本を読むのを待っている。
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