残映ホライズン

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───── 「今日は偵察だって?」 弥永(やなが)のトレイの上には、いつも山盛り肉が乗せられている。食堂で遅めの朝食を取っていた僕は、自分の皿に目を落とした。 ペラペラのベーコンが二枚、まだ残っている。 「波瑠真(はるま)と一緒に行く」 「伏撃に気をつけろよ」 「平気。僕は迷ったりしないから」 一瞬の判断の遅れが敗北に繋がる。 だから僕は迷わず撃ち落とす。 「さすが、青い悪魔(・・・・)」 「馬鹿にしてる?」 「逆、誉めてるってことだよ」 民間軍事会社リベルタの航空特殊作戦コマンド『コルニクス』に配属されて、半年が経とうとしていた。 生物兵器を用いた戦争が終息して15年。 世界のおよそ8割が、汚染された空気によってガスマスク無しでは歩けないほどだ。 僕が雇われているリベルタは、残りの2割、つまり正常な環境を所有するこの国を侵犯してくる敵を殲滅すること。 つまり、お金を貰って人を殺している。 仕事だから、別に罪悪感なんてものはない。 「そもそも、青い悪魔って……乗ってる戦闘機はみんな同じ青色じゃないか」 通称、翡翠(カワセミ)。 僕たちコルニクスが使用するターボファンエンジンを積んだ主流の戦闘機で、ボディはカワセミの羽のように青い塗装が施されている。 「時枝(ときえだ)は特別なんだよ。お前とドッグファイトして逃げ切れた敵機がいるなら、パイロットの顔を拝みたいものだ」 嬉しそうに弥永が一重の目を細める。 僕とは違う漆黒の瞳や頭髪は、この国出身の特徴的な色だ。 「好きで撃ち落としてるわけじゃない」 「まあ、仕事だもんな」 皿の上のベーコンにフォークを突き刺そうとして、手が止まった。
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