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山育ちのミントは茫々と生えた雑草も難無く歩ける。
シオンを見ると、歩きにくそうにしていた。
「ヴィオン王子ならきっとこんなのへっちゃらよね」
「お、俺だって王子だ! 鈍空の……」
シオンを見ると、顔が赤くなっている。
「ヌルデならきっと、こんなとこ通るの絶対嫌だって言うだろうな」
「何よ、浮気男のくせに」
「まだ俺が、ヌルデを抱こうとしてたのを根に持ってるのか?」
「認めるんだ」
「仕方ないだろ。あんな恰好で迫られたら、断れない」
「あんな恰好って?」
シオンは黙り込む。
どうした事だろうと振り向くと、高潔な青年は顔を真っ赤にして口を押さえている。
何を、想像している。
「いぃいやらしい! もう戻っていいわよ! 戻ってヌルデ様と今想像してることすれば!」
「違う、お前があの恰好をしたのを想像して……」
あの恰好って、どんな恰好だ。
とにかくミントの顔は、赤く燃え上がる。
「もっといやらしい! 下品! もう手ぇ放して!」
「今宵は、生涯で一番幸せな夜になりそうだ」
光明がさすように雲に隠れていた月の姿をシオンの瞳は捕えた。
ミントが戻ってきた事で、いずれツバキやヴィオンも見つかるだろうとシオンの恐怖や不安は薄れていた。
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