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ずっと昔に造られたような、いかにも古めかしい家の三角屋根が見えた。
「へぇ、あそこがミントの家か」
「何よ、その初めて来たみたいな喋り方は。さっきも来たんでしょ、ここ」
わざとらしい演技に意外と馬鹿じゃなく、とんでもなく馬鹿な人なのだと、心の中で毒づく。
ミントはシオンにいつまでも握られている手を放そうとして、ある事に気づいた。
それは、ここまでの距離を歩いてきたから疲れのせいで汗が出るのは解るけど、シオンの手は妙に汗ばんでいる。
その上がっしりと握られ、少し痛い。
「シオン? もう手は放して大丈夫よ」
「あ、ああ」
思い出したかのように返事をし手を放すと、ため息を吐く。
「疲れたの?」
「い、いや……別に……」
どうも挙動不振だ。
手をコートのポケットに閉まったかと思えば、再び出して、額の汗を拭ったり、髪をくしゃくしゃ掻いたり。
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