恋闇ノ魔女番外編

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「良かったら、君の名前も教えて」 「嫌」  すかさず私は答えた。  ガクッとアレンは肩を下げた。 「はは…、随分硬派だなぁ」  困ったようにアレンは頭を掻く。 「じゃ、お邪魔しましたぁ」  もう一度そう言って、今度こそ私は本当に部屋を出ようとした。 「あ、じゃあさ、今からどこかでお茶しない?」 「お茶?」  うん、とアレンは頷く。  私は踏み出した足を止めてアレンを見た。 「シャレット街は俺の第二の故郷みたいなもんだから、いい喫茶知ってるよ」  ぱちっとアレンはウインクする。  誰もそんな事聞いてない。 「どう?」 「う〜ん……奢ってくれるなら……」 「もちろん。女の子に支払いなんてさせないよ」 「じゃあ行く。アップルパイがあるとこがいいな」  奢ってくれるっていうんだから行かなきゃ損よね。  アレンが手を差し出したので私も自分の手を重ねようとした。  それを間に入ってきたシオンに遮られた。  目の前に大きな背中。 「アレンお前な、こいつがどんな女か知ってて言ってるのか。お前も狙われるぞ」  ね、狙われるって……。 「いいだろ、別に。お茶するくらい」  アレンは渋面を作る。 「婚約者がいるだろうが、お前」  シオンは呆れたようにため息を吐く。 「そうだな。婚約者がいなけりゃぜひとも俺の彼女にしたい」 「え? 私?」  びっくりして私は自分の顔を差した。  うん、とアレンは頷いてまたにっこり笑った。
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