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誤魔化すように笑う。
「そうなんだ……。じゃあ仕方ない、ね……」
アレンの顔を見れば、憎たらしいほどの笑顔を見せている。
頭いいな、この人。
さすがシオンの兄弟だ。
シオンが頭いいかは知らないけど。
「でも、本当に婚約してるの?」
「本当だよ。ここのお嬢様とね。だからここにいるんじゃないか」
「……そっか。そうだよね」
言葉ではそう言ったけど、私は信じてない。
もし本当に婚約してるなら、今こうしてシオンが黙ってるはずないもの。
婚約は本当だ、対象外ならもう来るな、って言えば私を追い払う事ができる。
なのにシオンは、背中を向けたままじっとしている。
でも本当じゃなくても、婚約してるって言えば、少しは効果があるのに何も言わないって事は、もしかして……。
なんて、甘い夢を見たり。
「まあ、それよりもさ。早くお茶行こうよ。君を誘いたくてここに来たんだから」
「え? そうなの?」
アレンは照れ臭そうに笑う。
よく、解らない人だ。
「それにさ。さっきも言ったけど、君がサントライユまで来たら、俺は婚約破棄してもいいよ」
「……ううん」
でもアレンは全然好みじゃない。そもそも私は魔女じゃないし。私が興味あるのはシオンだけ。
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