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愛香たちに会った後、自宅に戻ると、倫世が部屋から出てきて面倒そうな表情を向けてきた。
「あたし、パパたちのところに行くわ。もう少ししたら向かうから。
キャリーに入らない荷物残していくけど、勝手に処分しないでね」
呆れた言い分に、直樹は軽蔑の表情を浮かべて返した。
「出ていくのは勝手だ。でも、昼間、一人にできないのは分かってるんだろうな」
駆け引きだった。もう、この家にいるのも嫌な倫世がどう出るか、直樹は窺っていた。
「貴方がしたらいいでしょ。それに、どうせ、保育園に入れるつもりだったんだから、少し早くなる程度じゃない。さっさと入れたら?」
今年、薫は四歳になる。倫世の育児に不安しかない直樹は、早くどこかの保育園に入れたいと、あちこちに申し込んでいる。
数か所からいい返事をもらっていて、離婚の申し出と同時に入園させようと思っていたから、確かに少し早くなる程度だ。
でも、その考えを倫世は知らない。だから、年齢で入る程度と思っているはずだが、言われると不穏当な気分になる。
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