第四章 思惑を秘めた接近

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 ***  玲奈の希望が(かな)うチャンスは、思ったよりも早く訪れた。  =あのね、子供出来たんだ=  いつものように、とりとめない会話をするつもりだった玲奈は、愛香からの報告を聞いて、スマホを持ったまま固まった。  「え、子供?  ……いつ分かったの?」  =先週の終わり。だるくて生理止まったから病院行って、二か月だって=  少し恥ずかしそうな声だったけど、それ以上に幸せそうな友人に、玲奈は痛む胸を押さえながら、明るく言葉を返した。愛香は何も知らない。だから、早く友人に教えたいというだけ。でも、玲奈は心が痛んだ。  「おめでとう!良かったね。誠之、大喜びだったんじゃない?」  =うん。父親教室に行くって、今から張りきってる。過保護すぎるのがちょっとね=  言葉ほど困った雰囲気はない。誠之なら、家事も全部を自分で行いそうだ。でも、それだけ愛香を大事にしているということだから、良かったと思う。
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