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どんな条件で決着したか分からないけど、あのデータがあるから、直樹に有利な形だった可能性は大きい。もし、存在を明かしたとしたら、倫世は公表されたくないだろうから、譲歩するしかない。
彼女にはものすごく不満でも、結局自分の行ったことが返ってきただけ。嫌いな人間だから、不利な決着だったとしたら気分はいい。
もう終わったんだから、という気持ちはない。倫世が無意識にどれだけ玲奈を傷つけたか……思い出すだけで、今でも怒りが湧く。
でも、直樹は離婚が成立したら今の会社を退職して、実家に帰ると聞いている。彼の実家のある街は、東京からは結構遠い。
玲奈の計画を実行するには問題だと思っていた。どうしようかと考える彼女の耳に、愛香の声が届いた。
=それでね、直樹、東京に残るんだって。
会社で仲いい人が次のところ紹介してくれて、そこで働くって言ってた。その会社の近くに引っ越す予定だから、住むとこ結構、うちと近くなるんだ。だから行き来しやすくなるねって=
「え。実家に帰るんじゃないの?」
直樹に仲のいい同僚がいると知って、玲奈は驚いた。彼の状況を思えば、遠巻きにされていると勝手に想像したが、そういう人間だけではなかったらしい。
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