第四章 思惑を秘めた接近

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 ***  玲奈が誠之から呼びだされたのは、愛香の妊娠を聞いてから半月ほど()った頃だった。  二人の住むマンションに、お祝いの花を持って向かう。それなりに親しく話す同僚に()いて、花がバスケットに入った物を選んだ。  愛香の好きな白いバラがメイン。本人のイメージにも合っている。  「あれ、開いてる」  普段は鍵が掛かっているのに、ドアを動かすと開いた。不思議だけど呼ばれたのだから入って大丈夫だろうと、チャイムを鳴らしながら玲奈はリビングに向かって挨拶の声を掛けた。  「おはよう、入るね」  チャイムが聞こえたようで、誠之が慌てた様子で出てきた。  「あ、おはよう。来てって呼んだのこっちなのに、出るの遅くてごめん」  「それはいいんだけどさ、私が来るにしてもドアに鍵かけないって、ちょっと不用心じゃない?」
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