第四章 思惑を秘めた接近

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 軽く言ったつもりだったけど、誠之の表情は暗くて、玲奈はとまどったように(たず)ねていた。  「……何かあった?」  玲奈が訪問する時にいつも出迎えてくる愛香がいない。一瞬、彼女は不在かと思ったけど、それなら、玲奈を呼ぶ意味が分からない。  誠之だけなら、玲奈を自宅に呼ぶことは絶対ないだろう。  それなら、どうして愛香が出てこないかが分からなくなる。  「愛香、いるんだよね?」  一応確認すると、誠之は沈んだ表情のまま頷いた。  「もちろんいるよ。休んでるけど」  「どうしたの?風邪とか?」  心配になって()くと、誠之は寝室へと視線を向けながら説明してきた。
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