きみと 逃避行

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__遠距離でも、大丈夫だよ。 東京に住みはじめてからもうすぐ半年がたとうとしている。 地元に残った彼をおいてきたのが間違いだったのか、わたしは彼の大丈夫だという言葉ばかり信じていた。 一カ月に二回。 わたしが地元に帰るときと、 彼が東京に来るとき。 二週に一回の週末をいつまでも待っていて、それだけがわたしの頑張る理由だった。 お互いの時間が合えばかかってくる電話、 着信音は彼が一番好きなバンドのラブソングだった。 ベッドに寝転んで目を閉じて歌うそれを、 わたしは幸せだと思っていつも聞いていた。 あの音楽はもう流れないし、聴きもしなかった。 彼が好きだったバンドは、気づけばラブソングを歌わなくなっていた。 ちょうど別れたころに発表された失恋ソングのほうがわたしにはお似合いで、それを聴きながら私は夜、ひとりで泣いたのだ。 彼が好きだといったもの全部、わたしの好きなものになって。 彼がわたしを好きじゃなくなったのだから、 わたしは好きだったものもすべて手放したかった。 でもどうしても、音楽だけは消えてくれないのだ。 洋楽ばかり好きだった私を塗り替えた邦ロックのことを、わたしは嫌いになんてなれなかった。
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