きみと 逃避行

7/14

150人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
__バンドマンって、なんかかっこいいよな。 ギターを持つ手とか、マイクに寄せる唇とか全部、超かっこいいと思うんだ。 ライブハウスの映像を見ながら、彼がそう話していたのを覚えている。 彼の好きなバンドマン、ダークブラウンの瞳がわたしと重なっていた。 「ねえ、その後ろのって、ギター?」 「そうだよ」 「…聴きたい、モノクロ」 ついてきて、 そう言われて黙って連れられるまま歩いていた。 相変わらず車も人も全然いなくて、どこを通っても当たり前に立っている電灯だけがわたしたちを照らしていた。 大きなビルをくぐりぬけて、私の家と浜反対の道を歩いていた。 近所のはずなのに一度も通ったことがなくて、都会はどこにいっても全部が初めてできっとその道をずっと覚えておくことはできないと思った。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

150人が本棚に入れています
本棚に追加