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春時雨
「雨…」
私、辻村 菫は今春、高校進学の為にこの街へと引っ越してきたばかりで、父のいる家へと荷物を運んでる最中だった。
「菫、雨が降ってきたから、早めに荷物を入れてしまおう」
父は荷物が入った段ボールを持ち、そそくさと家に入っていく。
濡れてしまわないよう、私も小走りで家の中へと荷物を運ぶ。
「菫が持ってる荷物で最後かい?」
「ううん、あと1つ車の中に残って。」
「それはパパが持ってくるから、菫は部屋の片付けをしちゃいなさい」
「うん、ありがとう」
ダンボールが重なった部屋で、私は深呼吸をする。
新しい環境に土地、上手くやっていける自信はない。
「どうした?菫」
荷物を持った父が、立ち尽くしている私を不思議そうに見つめる。
「こんなに荷物多かったかなー…って悩んでたところ」
「はは。
菫は昔から片付けが苦手なのに、必要かもしれないって物を取っておく癖があるからなぁ」
「もう、やめてよお父さん」
片付けを出来ないのは事実だが、実際に言われると少し情けなくなる。
「とりあえずできそうな範囲で片付けてしまえばいいよ。学校が始まるのはもう少し先だろう?」
「うん、そうするよ」
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