春時雨

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玄関にしゃがみ込む父の背中から、春を感じさせる光が優しく差し込む。 「菫、先に出るけれど忘れ物はないようにね。  それと、戸締りもしっかりするんだよ」 心配そうに私を見つめる父。 「お父さん…もう高校生にもなるんだから、大丈夫だよ」 「そうなんだが…菫はおっちょこちょいなところがあるからなぁ…」 父はそう言い、悩ましそうに顔をしかめた。 「もう!大丈夫だよ。早くしないと仕事に遅れちゃうよ」 「ああ、そうだね…行ってきます」 家を出る父の背中へと手を振る。
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