第一章 エントリーには二つの理由

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 ***  「あ、あたし、あっちに行くけど由莉は?」  希望するマスコミ関係のブースを回ったけど、それほど時間は()っていない。  友人は他の業種にも興味があるようだけど、由莉はあまりなかった。  「私は少し休む。適当な時間になったら待ち合わせようよ」  「うん、分かった。それじゃ、後でね」  言いながら友人は金融関係のブースが並ぶところに向かった。  「ああいう業界に興味あるんだ……」  広告の仕事はマスコミだけでなく、ある程度の規模の会社にも必要とされる職種だ。  友人が向かった金融関係の会社も定期的に記者会見を行うから、広告宣伝に力を入れているはずだ。  でも、由莉はほとんど興味がなかった。そうは思うけど、他のブースに行かないのは少しもったいない気もした。  なので、今までは考えたこともない業種のエリアへと行こうと思った。  歩く由莉の目に、ある会社のブースが(うつ)り、思わず足を止めた。
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