ねがいごと、いっこだけ

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「あった!! ママ、あったよ!!」  だれかの声で目がさめた。  ぼくのハンドルをむんずとつかむ手。  パッとぼくをひろげて中のはっぱと、しろ色のつめたくおもかったものをはらってくれたの。 「だいぶ、よごれてしまってるわ」  ぼくをのぞきこんだのは、ママとショウくん。  ショウくんだ!!  ゆめじゃないの?! 「ねえ、ショウくん。あたらしいカサをかいましょうか」  なんだって?!  ショウくん、ねえ、ショウくん?  ぼくがひからびて、きたなくなってしまったから?  はっぱがいっぱい入っていて。  しろ色のつめたいののせいで中までビシャビシャになってしまってるから?  かなしいかおのショウくんがぼくをじっと見ている。  ショウくん、ぼくはやっぱりすてられてしまうの?!  だまってぼくを見ているショウくんにママはこう言った。 「もう名前シールもないし、ショウくんのかどうかもわからないのよ?」  そうだ、そうだった。  ぼくはもう、ただのくろ色のカサだった。  かなしい気持ちでいっぱいになる。  だけど。   「わかるよ! これはボクのなんだ! 見てよ、ママ!! こんなにあたまがギザギザしているのはボクがひきずったからだよ、これはボクのカサだ」  そういってショウくんはビシャビシャなボクをとじてママにあたまを見せてから。 「わすれてて、ごめんね」  と、ぼくをだいじにだきしめてくれた。 「おうちにかえって、やさしくおていれしましょうか」  ママがわらってくれたらショウくんもわらった。  ぼくはホッとして、ショウくんとママにありがとうをしたの。  それから、はっぱとにもありがとうをしたの。  【おしまい】
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