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「なぜ恥ずかしいんです? 惚れた相手に三十路越えも性別も関係ないでしょう? クインシー・・・僕はあなただけを愛してるんです。あなたに殺され、食べられたいと思うくらいに・・・」
そう言って満開の花のように微笑んだ青年(と言うより少年)は俺の唇にそっとキスをし、照れ臭そうに笑んだ。
本気になるつもりなんてなかった・・・。
本気になれば虚しくなることも苦しくなることも知っていたから・・・。
だからいつものように遊んで適当に捨てるつもりだった・・・。
食い散らかして捨てるつもりだったのに・・・。
なのに・・・。
「クインシー・・・愛しています。これからもずっと僕と一緒に居てくださいね?」
そう下手くそに愛を囀ずる若いひばりにわたしは恋をしてしまった・・・。
カマキリの分際でわたしはひばりに恋をした・・・。
いつかひばりはわたしを捨て空に飛び立つだろう。
ならせめてそのとき、わたしを食べて欲しい・・・。
そうすればわたしはひばりの血肉となれるから・・・。
そして、叶うことなら来世は蟷螂ではなく・・・。
「・・・せいぜい」
わたしはそう言って息を吸い込み、その吸い込んだ息をそっと吐き出した。
吸い込んだその息は春の切ない匂いがしていた。
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