1人が本棚に入れています
本棚に追加
シャカのお誕生日
早朝
神社ではラジオ体操と子ども達の笑い声が響いていた。その近くに小さめのお釈迦様の像も置いてあった。
「さてと、今日のラジオ体操は終了ー!ハンコ押すから、カード持ってる子はおいでー」
仕切り役の人が子ども達のカードにハンコを押している。だが、今日はいつもと違うハンコのようだ。
「あれ?このハンコなんだ?人の顔みたいだけど…」
「それはお釈迦様の顔だよ。今日はお釈迦様の大切な日だからね」
「大切な日…?あ、甘茶が貰える日だ!やったー!」
ぴょんぴょんとはしゃぐ子ども達。すると、ひとりの男の子がお釈迦様の像に向かってカードを見せた。
「何やってんだー?」
「お釈迦さまにも見せてあげようと思って」
そう言って、お釈迦様の目線の高さまでカードを持ち上げて見せていた。
するとだ。
『…え、すごい!これシャカじゃん!え、何々シャカってそんなに人気者なの?どうしよー!まいっちゃうなぁ』
誰のものでもない声が神社に響いた。しかし、誰もこの声に気付かない。
「もう見れたから大丈夫じゃね?早く帰ってサッカーしようぜ」
「うん!またね、お釈迦さま」
先程の声が聞こえていない子ども達は走って行ってしまった。仕切り役の人も子ども達は居なくなったのを確認してから帰って行った。
神社には神主ひとりだけになった。すると、先程誰にも聞こえていなかった声がまた喋り出す。
『シャカもとうとうグッズ化か…えー、他に何がいいだろう。シールとか?あ、ブロマイドも良いなぁ…もう、色々とあり過ぎて迷っちゃうよー!ねぇ、神主は何が良いと思う?』
「なんでもいいから、とりあえず黙ってください」
今まで無視されていた謎の声に神主が返答した。謎の声は、それを知っているのか全く気にせずに話し続ける。
『あ、シャカ心広いから著作権とか気にしないから。バンバンシャカのグッズ出していいからね〜』
「だから静かにしてくださいよ!お釈迦様!」
そう言って神主が目を向けた先には、この神社に置かれているお釈迦様。
そう、先程からずっと喋っていたのはこのお釈迦様なのだ。しかし、この声は何故だか神主にしか聞こえない。
口や体は動かさず、テレパシーのように神主の脳内に声を飛ばしているのだ。
「もう…他の人が聞こえないことをいいことに、ベラベラ喋らないでくださいよ!俺が変な人に思われるんですからね!」
『いやぁ、ごめんね神主』
「まったく…今日はあんたにとって大切な日なんですからね。分かってます?」
そう言って神主の腕時計をシャカに見せた。そこには4月8日の文字が表示されていた。
『そっかぁ…もうそんな時期なんだね』
今日はお釈迦様、もといシャカの誕生日なのである。
最初のコメントを投稿しよう!