神と仏と廃墟の裸婦像

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 ここには神がいないのか、と俺は思った。目の前の裸婦像に下世話な落書きがされているからだ。俺は芸術には詳しくないが、これがいけないことくらいは分かる。  足元には缶コーヒーが置かれ、灰皿として使われていた。この裸婦像は平和の像とかナントカで、山奥の交通量が多いバイパスのドライブイン跡地に場違いな感じで立っている。  もちろんドライブインはもう何年も前に潰れたので、彼女を清掃する人間もいない。首元から乳房のあたりまでが白いペンキで汚れてしまって、なんともかわいそうだ。  俺はなんとかして裸婦像に手を伸ばし、その豊満な身体の汚れを落としてやりたくなった。このまま放置されれば、きっと目も当てられない姿になるだろう。ただでさえ目の前のバイパスは交通量が多く、排気ガスが充満している。そこに悪ガキどもの落書きまで加わった。場所が場所だったならば、この裸婦像も大切にされて街のシンボルにでもなっただろうに……。  俺はいつの間にか、自分の姿をこの裸婦像に重ねていた。 「こいつも俺と同じで、誰からも忘れられたんだなァ」  そんなことを考えていると急に悲しくなってきた。こうなってしまってから俺は神様に何度も願ったが、その願いが叶ったことは一度としてない。  ここには神がいないのか、と俺は思った。目の前の裸婦像に下世話な落書きがされているからだ。俺は芸術には詳しくないが、これがいけないことくらいは分かる。
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