3. 図書館までの道の想い出

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3. 図書館までの道の想い出

「最後に勝負した時は確か俺が買ったんだよなぁ」  俺は立ち上がると、公園を出て、高級アイスを買っていたコンビニへと向かう。 「あれ」  君との想い出で溢れていたコンビニはもうそこにはなかった。そこには別のコンビニが入っていた。 「時間の流れだな」  俺はそう呟くと、せっかくだからとコンビニに入り、あの時よく食べていた高級アイスを買う。  チョコレートのカップアイス。チョコがすごく濃厚で美味いんだよなぁ。 そう思いながらベンチに座ってアイスを口に入れた。  うん、美味い。  やっぱり美味い。  でも、何か。  ああ、君がからかな。  俺はあっという間に最後の一口を口に入れると、ゴミ箱に捨て、大きく伸びをした。時刻を見ると、もう11時を過ぎていた。  時間というのは、あっという間に経ってしまう。  君との約束は午後4時。それまではまだたっぷりの時間があるようにも思えるし、そうじゃないようにも思える。  今度はどこに行こうかな。そうだ、よく夏休みに勉強した図書館に行ってみよう。暑いし、そこで涼むとしようか。  俺は鮮明に覚えている図書館への道を歩き始めた。  よく学校の帰りによった図書館。君はセーラー服を着て。俺は学ランを着て。  お互いの家で勉強すればいいじゃんって思ったけど、君が家だと勉強が捗らないと言って図書館で勉強することになった日々。 馬鹿し合いながら一緒に歩いた道を、俺は一人で静かに歩いた。 *** 「ねぇねぇ、優斗! 明日までの数学の宿題やった?」 「うん、もちろん」  俺はそう言うと、君が「見せて!」と言った。 「またー? 嫌だよ。ていうか、???、宿題ちゃんとやれよ、明日までなんだから」 「えー、だって勉強嫌いなんだもん」 「そんなの俺だってそうだわ」 「嘘だー! だって優斗、ちゃんと宿題やるじゃん!」 「宿題をやるのと、勉強が嫌いなのは別だよ」  俺は呆れたように言うと、君が頬を膨らまして、「いいじゃん!」と言った。 「一生のお願い!」 「それ昨日も聞いた」 「お願いだよ、優斗ー! 明日絶対に私当たるんだよ、だからお願い!」  俺はだから明日までなんだから自分でやればいいじゃんと思いながらも、大きなため息を吐いて、「仕方ないなぁ」と言った。俺も、君に頼られてまんざらでも無かったのだ。 「やっぱり持つべきものは優斗だよー! 優斗、最高ー! 神ー!」 「うるさい」  俺は君の頭を数学のノートで叩くと、君が「本当にありがとう!」と言い、ノートをパラパラと捲り、ぶつぶつと呟きだす。 「前見ながら歩かないと危ないぞ」 「優斗がエスコートしてくれるんでしょ?」 「しないよ」 「えっ、酷い! 優斗、残酷!」 「残酷ではないと思うよ?」  俺はそう言うと、君がくすくす笑う。 「優斗さぁ、面白い性格してるんだから、クラスメイトと話せば絶対友達出来るのに」 「面白くさせてるのは???だと思うけどね」 「いやいやー、私何も面白いこと言ってないじゃん」 「は? 冗談だろ? お前、馬鹿だな」 「ちょっと、断定しないでよ!」  君がムッとしながら言うと、俺は大口を開けて笑う。君が「笑うなー!」と言いながら、俺の数学のノートで何度も肩を叩く。 「痛い! 痛いから! ていうか、俺のノートだから!」  俺はそう言うと、君に「あっ、ごめーん」と皮肉を込めて言われる。見事に俺のノートはふにゃふにゃになっている。俺は長いため息を吐くと、「お前なぁ」と言った。 「ふんっ、優斗なんかになっちゃえー!」  君はそう言うと、アッカンベーをして、走り出す。 「???……! 待ちやがれ!」  俺はそう言うと、君を追いかける。君はあっという間に捕まった。クラスの女子の中だとかなり速い方なのに、クラスの男子でも遅い方の俺に捕まるなんて、やっぱり男女でこんなに差が出るものなんだなと改めて認識する。 「嘘っ! 捕まった?! 優斗より速い自信あったのにー!」 「俺もビックリしてるよ」  俺はそう言うと、「ノートもう見せてやらないからな」と言い、君の手からノートを奪った。「あっ!」と君が言って、「ごめんなさい、お許しください、優斗様ぁ!」と言う。 「これからはちゃんと自分でやれよ? 宿題、いっつも俺に見せてもらってばっかりだと、大学受験で力出せないぞ」 「それは嫌ぁー!」  君はそう言うと、ムンクの叫びのような顔になる。内心、思わずそっくりだなと思ってしまった。 「優斗と同じ大学に行くんだから! 受験合格するんだからー! ちゃんと勉強しよう、うん」  そんなことを果たして夏に言ってもいいのかと俺は思うが、まぁ君の事だから大丈夫だろう。何かと本番で強いタイプだからな。 「でも今日だけは……」  俺は呆れたような目で君を見ると、君が「今日で最後だから!」と言い、俺に懇願した。俺も俺で甘い。結局君にノートを見せてしまう。  しょうがないのだけれど。  これが君との図書館までの道の想い出。
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