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思えばそれでも最初の内は余裕があったと思う。
限界ギリギリで校門をくぐり、靴を履き替えて階段に足を掛けたところからネタを考えてもどうにかなったものだ。
『頼んであった人力車の兄ちゃんがコロリに罹ったとかで、これなくなって!』
は、「大正時代かよ!」のツッコミが入って皆んな納得してくれた。
『昨日知り合った女の子がメデューサの子孫で、足元がさっきまで石だったんです!』
も、「ありえねーだろ!」で何とかなった。
しかし、そうこうしている内に段々とネタが苦しくなってくる。何しろ1度使ったネタは2度と通用しないのだから。それに『相手』の要求するハードルも段々高くなっていく。
『土日の2日間でアフガンに行き、ゲリラと戦闘を繰り広げてましたので!』
は、「ほぅ……これがホントの『ランボー者』ってか」という先生のツッコミで逃げきった。
それでもどうにかネタを考え続けねばならない。何しろ『遅刻』判定が5回貯まると「内申書に書くからな」と脅されているのだから。……残数はすでに『1』だ。もう余裕はない。
『レックス・ルーサーがやって来て、乗っていた電車を時空間ごと固定してきたんです! なので急いでスーパー○ンに変身し、地球の方を回して駅を電車の位置に持ってきました!』
は、そうした苦しい状況で生まれた『傑作ネタ』認定されたひとつだ。
……別に嬉しくも何ともないが。
『変なお婆さんから貰ったリンゴを食べたら起きれなくなってしまいました!』
と言った時は「……お前は男のクセに白雪姫か?」と冷静なツッコミが入って危うく撃沈しかけたが、
『BL展開なら、王子様のキスで起きるのもアリだと思います!』
と言い切って、クラスの半数(女生徒)の同意を得ることでギリギリ何とかなった。人間、勢いも大事だと思う。
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