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その2
父親が他界して三年、女学校卒業後すぐに嫁入りした母親に、都内一等地に取り残された洋館を維持するほどの知恵も経済力もない。高圧的な父親に長年仕えてきた母親は、左うちわの未亡人を思い描いていたようだったが、遺されたものは古ぼけた洋館と土地だけだった。
母親は美穂の結婚相手に財力を求めることにした。
この三年、口を開けば結婚、結婚。お見合い話もいくつか持ち上がったが、お金目当てでも構わないという男は、美穂を奴隷にできると信じて疑わない。
私はこの洋館が嫌いだ。誰も私を見ない。
あの洋館のお嬢様、この洋館の娘なのだから、この洋館に相応しい…。
家の中でも外にいても、常に誰かに監視されている生活。
消えてなくなればいいのに。
無気力から抜け出せないまま、年だけを重ねてしまった。
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