神頼みなんて、いたしません!?

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『いいか、大和。よく聞け。歴史ある由緒正しいうちの神社で、わしを含め歴代の神主にも誰一人与えられることのなかった特別な力を、お前は授かったんだ。決して自分の私利私欲のために使ってはならん。ご先祖様に顔向けできんぞ。わかったな』  自分の、私利私欲……。  そうだ。もしも今、俺が美琴ちゃんに告白したら。  美琴ちゃんの願い事を、俺が叶えることになる。  それは同時に、俺の願望を叶えることでもあって。  開きかけた口を再び引き結ぶ。  美琴ちゃんは小さく首を傾げて、不思議そうな顔で「大和くん?」と俺の名前を呼んだ。  うぅ……可愛い。  だけど俺、よく考えてみろ。  例えば、さっきの美琴ちゃんの願い事を聞いていなかったとして。俺に、彼女に告る勇気なんて、はたしてあっただろうか?  あるわけない。  いつも遠くから見てるだけで精一杯で、大して近づく努力もしていなかったんだから。  かき消したはずの罪悪感がむくむくと頭をもたげて、あっという間に俺の中を埋め尽くす。  先祖に顔向け云々じゃなくて……男として、どうよ?  あぁ、爺ちゃんに似て根がクソ真面目な自分が憎い。  だけどどうしても、告白の続きを口にすることができない。  ここでこんなにあっさりと成就して、本当にいいのか――?
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