天孫降臨の地

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天孫降臨の地

「この神社、饒速日(ニギハヤヒ)っていう神様が降臨した時に乗ってた天磐船(アメノイワフネ)が祀られてるんだって」。  チャット画面に初めて見る漢字が表示されている。  ニギハヤヒ?そういえば、なんか聞いたことがあるような。ジブリかなにかで。そうだ、『千と千尋の神隠し』だ。ハクの本当の名が「ニギハヤミコハクヌシ」で、「神様みたいな名前」って千尋が言うんだった。小学生の頃に観たから、神様の名前なんて全然知らなかったけど、20年経った今も知らないままだ。  私たちは、その天孫降臨の地に向かうことにした。  とあるオンラインサロンで出会った私たち4人は、年齢も職業もバラバラ。「何友達?」と聞かれると、すごく答えづらい。  レンタカーを借りて、大阪の梅田から交野市へ。途中で腹ごしらえを済ませる。車の中では沈黙になることなく、目的地である磐船(いわふね)神社に着いた。いよいよ岩窟(がんくつ)巡りが始まる。はしごのような階段を降りて、細い橋を渡る。神様が乗ったという岩が織りなす「生まれ変わりの穴」へと一歩一歩向かっていく。 「うわ〜上見て!岩と岩の間から空が見える!」「ほんとだ!どうやって支え合ってるんだろう?」「すごいなぁ、やっぱり自然の力は」  口々に感心していると、人が一人通れるほどの小さな穴があった。これだ。「生まれ変わりの穴」だ。 「きれいな心に生まれ変わりますように、神様」。  清々しい気持ちがする。私は生まれ変わったんだ。さっきまでとは違う自分。昨日までとは違う私。今、私は赤ちゃんなんだ。 「あ、着いたよ。生まれ変わりの穴」。  先頭の一人が言うと、目の前にはさっきよりも一回り小さな穴があった。私はまだ生まれ変わっていなかった。
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